=第188号 平成25年3月号=
慢性閉塞性肺疾患(COPD)について 従来、慢性気管支炎と肺気腫と分けて考えられていた二つの病気が、病変が起きる場所が少し異なるだけで、原因は同じなので、まとめて呼ばれるようになりました。
気道に炎症が起こり、少しずつ狭まって息苦しくなり、咳や痰が増え、肺胞(気道の一番深いところ・酸素と炭酸ガスを交換する部位)が拡がったり、破壊されてしまいます。
同じ様に気道の炎症で気道が狭くなる病気に、“気管支喘息”がありますが、気管支喘息は気道の炎症の原因が主にアレルギーで、そのアレルギー性炎症を治して、気道の狭まりを改善することができる点が、COPDと違っています。
また気管支喘息は小児から発症する事が多いのですが、COPDは40歳代以降、年齢と共に増加していくこと、特に気道の狭まりの改善が、気管支喘息より遅い、または悪い点で、臨床症状も異なっています。
COPDは、空気中の刺激物質が原因でおこり、その約90%がたばこです。また、たばこを吸っている人のうち、約10~15%にCOPDが発症し、日本においては現在、約500~600万人の人がCOPDと言われています。 COPDの診断は「呼吸機能検査」で早期発見も可能ですが、呼吸機能検査がまだ普及されていない為、約90%の人が未治療の状態にあるといわれています。
前に上げた症状が出るまでには、病気は進んでしまっていることが多いのです。
治療の第一の選択は禁煙です。
COPDの気道の狭まりは喘息と異なり、治療してもわずかにもどる程度ですが、禁煙すれば、それ以上の進行を抑えることが知られています。 薬による治療は、まず抗コリン薬の吸入(携帯用)(テルシガン、スピリーバなど)、次いて気管支拡張薬であるβ2刺激薬(メプチンなど)の吸入や内服さらにステロイド薬の吸入(フルタイドディスカス、アドエアーなど)が推奨されています。
それでも進行し、酸素が充分呼吸できず呼吸不全に陥る人が全国で約5万人前後おられますが、それらの人には、家庭用の空気中の酸素濃縮器等を利用した、持続的な在宅酸素吸入療法や、外出時は持ち運びのできる酸素ボンベを使うこともできます。
一方、気道の抵抗力が低下して感染を起こしやすい為、肺炎球菌ワクチンやインフルエンザワクチンは、ぜひ接種されるようおすすめします。
平成25年2月 浦田 誓夫