=第187号 平成25年2月号=
スギ・ヒノキ花粉症
スギ・ヒノキ花粉症とは、スギやヒノキの花粉が鼻の粘膜、眼、あるいは皮膚や気道の沈着によっておこるアレルギー性疾患です。
日本の国土の約70%は森林でそのうち人工林が約40%を占め、人工林の大半はスギとヒノキで、スギは全森林面積の約18%、ヒノキは約10%を占めています。
またスギは全国的に植林が進んでいますが、ヒノキは主に西日本において植林されており熊本県は全国でも有数のヒノキの植林地です。植林は特に戦後に多く行われ、樹木の樹齢が進み花粉の産生量も次第に増しこの10年間で花粉の飛散の量は約2,4倍と増えています。
従ってスギ・ヒノキ花粉症の人は次第に増え、現在日本人全体の約26%がスギ花粉症にかかり、とりわけ10歳~50歳代では約40%の人がかかっており国民病の一つとなっています。
スギとヒノキの花粉は、アレルギー性が共通の成分が多く、スギ花粉症の人はヒノキ花粉症も合併しやすい為、最近はスギ・ヒノキ花粉症とひとくくりに扱われるようになりました。
花粉症の症状は、アレルギー性鼻炎(くしゃみ、鼻水、鼻づまりの3大症状)、アレルギー性結膜炎(充血、涙、眼のかゆみ)、アレルギー性皮膚炎(皮膚の発赤やかゆみ)とアレルギー性の気管支炎や気管支喘息(咳、ゼーゼー)が主ですが、これらの症状のため不眠、だるさ、集中力の低下、頭痛、胃腸症状などが加わることもあります。スギ・ヒノキ花粉症の症状の程度、時期は飛散する花粉の量や時期に比例しおおむねスギ花粉は2月上旬~3月下旬、ヒノキ花粉はスギ花粉の終了と相前後してはじまり4月下旬まで続きます。
スギやヒノキの花粉の量は前の年の夏(7~8月)の日照時間、気温の高さや雨の量に影響をうけ、特に日照時間が長い程スギの雄花の産生が増して翌年の花粉量が増えるといわれています。
また花粉が飛散してくる時期はその年の1~2月の気温の影響をうけ暖冬ですと花粉の飛散が早まります。おおむね春一番の頃にあたります。
また寒さが厳しいとその分花粉の飛散は遅れますがそのかわり短期間で花粉を放出するので一回の花粉量は増す傾向にあり症状がその分強く出る事があります。
また黄砂の時期にあたると、症状がより強くなります。最近は天気予報でスギ、ヒノキの花粉の飛散の程度を予想していますので、よく見られてマスク、めがね、うがい、花粉のつきにくい衣服を着たり、帰宅後は上着をよくはたいて衣服から花粉を落とすなどの注意をしてください。本年の花粉の量は昨年と比べて多いとされていますが昨年が少なかったのでほぼ平年並みと予測されています。
花粉症の治療は、抗アレルギー薬の点鼻、点眼、皮膚への塗布あるいは内服です。最近は特に花粉の飛散開始予測の1~2週間前より治療を開始する初期療法が症状を軽くすることができ推奨されています。
抗アレルギー薬は症状(くしゃみ、鼻水、鼻閉)に応じてH1ブロッカー、抗ロイコトリエン薬、副腎皮質ステロイドの投与が行われます。また以前からスギの花粉のエキスを少量ずつ皮下注射して花粉アレルギーの体質を改善する減感作療法が行われており唯一の根治療法とされていますが、最近皮下注射にかわり舌下や内服の減感作療法が開発中です。
平成25年1月 浦田 誓夫