平成24年10月号 院内報

平成24年10月号 院内報

=第183号 平成24年10月号=

甲状腺の疾患について ~平成24年9月号の続き~

2、甲状腺機能低下症

原因の大部分は、慢性甲状腺炎と呼ばれる甲状腺の慢性の疾患で、日本人の発見者にちなんで、橋本病と世界で呼ばれています。橋本病は、バセドー病と異なり思春期以降の女性に多く、加齢とともに上昇してきます。

男女比は 1:10~20で成人女性の約10%に橋本病が潜在するとされます。橋本病の場合もその発症のしくみはバセドー病と同様に、甲状腺を異物とみなす自己免疫疾患により甲状腺に対する自己抗体が出来るのですが、これは他の自己免疫疾患やアレルギーと同様、炎症をおこして甲状腺を損傷する方向に作用し、甲状腺ホルモンの分泌を抑えてしまいます。(TSBAb)、橋本病の側からみると、その半数に実際には、甲状腺ホルモンの分泌低下がおきて、以下のような症状が出現してきます。

これは心身の全般的な活動の低下を背景として、精神活動が衰え中高年ではうつ病や認知症と間違われることがあります。また消化器機能についても食欲が低下し、便秘傾向になりますが、体重は減りません。

これは体内にムコ多糖体と呼ばれる物質が蓄積するためで、特に皮下に蓄積すると固い浮腫様のむくみが出現し、また脱毛(頭毛、眉毛)がおこりやすくなり、皮膚も乾燥しエネルギー代謝も低下するため寒がりとなります。

また脈が遅くなってきます。特に新生児では橋本病とは異なり、先天的な甲状腺機能低下症がおきる場合があり、深刻な心身の成長障害がおきるため、全国的に新生児の健診が行われ、6000~7000人の赤ちゃんに1人の割合で発見され、早期に治療されています。治療は、原因は何であれ、甲状腺ホルモンの補充(内服)により甲状腺ホルモンを正常に保つことです。

治療は、橋本病や先天的な場合は終生補充することが必要となります。

3、甲状腺腫瘍

甲状腺の腫瘍は殆どが良性の腫瘍で、ろ胞腺腫、腺腫様甲状腺腫、機能性甲状腺結節、単純性びまん性甲状腺腫(思春期の女性が大部分です。)とありますが、一部悪性腫瘍があります。

悪性腫瘍の中には分化癌(乳頭癌、ろ胞癌)、未分化癌と髄様癌があり癌以外に悪性リンパ腫が発症することがあります。

悪性の腫瘍のうち、大部分は予後が良好な分化癌でたとえ転移を起こしても、他の臓器の癌と比べて進行がゆっくりな場合が多いです。また甲状腺腫瘍も他の甲状腺疾患と同様、男女比は1:2~8と女性が多く、他の臓器の癌と異なり甲状腺癌は若年~中年に多く発病します。診断はエコー下での針細胞診で行い、悪性であれば手術による切除が原則です。

平成24年9月 浦田 誓夫