第184号 平成24年11月号=
気管支喘息について
1.気管支喘息の症状と原因
ゼーゼー、ヒューヒューという呼吸音(喘鳴)、咳や痰さらには呼吸困難(喘息発作)がおこりいったん治っても再び繰り返しておこる状態で、他の同様の症状をおこす百日咳、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、心臓喘息、逆流性食道炎などを除きます。原因は通常の感冒に伴う気管支炎と異なるアレルギー性の疑われる気管支炎がおこり、治療が不十分であると気管支の粘膜の腫れや線維が増え、気道の過敏性が亢進してくることにあるとされています。
しかし、検査でアレルギー性が認められるのは、50~70%で(アレルギー性気管支喘息)、アレルギー性が検出できない患者さんが特に成人の気管支喘息では多く見られます(非アレルギー性気管支喘息、または内因性気管支喘息)。
一方小児の気管支喘息はアレルギー性の頻度が高く、70~80%と言われています。気管支喘息はこの20~30年間で2~3倍に増え、現在成人では約3%、小児では3~10%とされています。この増加した原因として、住宅構造がすきま風の入らない密閉された状態となり、ほこりやかびの量が増えたこと、室内でのペットの増加、また特に小児の衛生状態が良くなったこと(昔は寄生虫や青鼻の子供が多く見られましたが、このような感染が減ることで逆にアレルギー性が増してきたとされます)、大気汚染(車や工場の排気ガス)、心理的なストレスが増加したこと、さらに多くの食材や食品添加物の使用や早期離乳によると言われています。また、季節の影響は特に春と秋に強くでます。アレルギーをおこす最大の原因物質は、家のほこりで特にその中に含まれるダニ(ちりダニ、ほこりダニ)で、夏の間に繁殖し秋に死がいとなり最も量が増えて喘息がおこりやすくなるとされます。また、スギに代表される花粉症も気管支喘息の合併が増えてきています。その他、三大食物アレルギーとされる卵、牛乳、小麦とともに大豆、えび、かに類、そばなど、多くの食物がアレルギー反応をひきおこしてくる可能性があります。
2.特別な気管支喘息
1)運動誘発喘息
運動後10~20分程しておこる気管支喘息で特に小児喘息に多くみられますが治療で述ますように、β2刺激薬(短時間作用型)や、クロモリンの吸入やロイコトリエン受容体桔抗薬の内服でほぼ予防が可能です。運動で喘息が起こりやすいのは激しい運動をするために気道が乾燥しかつ体温より温度が下がるため気道の過敏性が増すためとされています。また、運動と関連してアスリート喘息と呼ばれる喘息が最近注目されています。特にオリンピック級の運動選手には普通の人よりも喘息の発症が多く、約10~20%もいると推定されるようになりました。特に、長距離に多く、激しい練習により運動誘発喘息がおこりやすく、運動中に大量のほこりを吸入し、また気道の温度や湿度が低下するためではないかと考えられています。
2)咳喘息
咳が8週間以上続く状態を慢性咳嗽といいますが、この中で40%前後が気道過敏性が高く、将来気管支喘息に移行しやすいといわれ気管支喘息の治療で軽快します。
3)アスピリン喘息
アスピリンで代表される鎮痛解熱剤で気管支喘息をおこすことがあります。気管支喘息の約10%にみられ、中等症から重症の人に多いとされています。ただし、アセトアミノフィン(カロナールなど)は、喘息をおこしにくく気管支喘息の人の痛み止めには安全に投与できます。また、アスピリン喘息の人は、食品添加物(防腐剤、色素)でも、喘息発作がおこりやすくなります。
4)月経、妊娠喘息
女性は、生理の前後や妊娠に伴い気管支喘息が発症したり悪化しやすい場合があります。一方逆に喘息が一時的によくなる場合もあり、予測が難しいとされています。
=以下次号=
平成24年10月 浦田 誓夫