=第249号平成30年4月号=
~花粉症について~
わが国では人口の約60%の人が何らかのアレルギー体質を持っており、中でもスギ花粉症は約40%、キク科(セイタカアワダチソウ、ブタクサ、ヨモギなど)花粉症は約20%の人がかかわっており、国民病といってもおかしくない状態です。
このようなアレルギー性疾患の増加は戦後から著しくなり、工業の発展、自動車の普及に伴う大気汚染や魚、野菜から肉食中心の食事への変化や衛生状態がよくなり寄生虫などの感染症が減少してしまったこと(衛生仮説)と関連があるとされています。
また以前は40歳台を中心とした成人が多かったのですが最近は10歳台やそれ以下の子供達が増え低年齢化してきています。
ここでは季節の代表的な花粉症について述べます。
Ⅰ.代表的な花粉症
1)春の花粉症
スギとヒノキが代表的で特にスギは最も多い花粉症です。スギは2~4月、ヒノキは3~5月の花粉の飛散のピークに応じて花粉症をおこします。当地では5月中旬から夏にかけてカモガヤ(イネ科)の花粉症が多くみられるのが特異的です。ただ沖縄と北海道の北部にはスギが自生しておらず発症しません。ヒノキはスギと一部アレルギー性の成分が共通しており、スギとヒノキの花粉症を合併している人は少なくありません。また、スギ花粉症は秋に少し飛散しておりスギ花粉症の約2割の人は秋にも症状が出ます。信州や北海道ではシラカンバ、ハンノキの花粉症があります。
2)夏の花粉症
イネ科(カモガヤ、スズメノテッポウ、オオアワガエリ、ホソムギなど)は初夏から夏、秋にかけての花粉症です。背丈の低い雑草ですので花粉は木の花粉と比べて遠くまで飛ばず、草に近寄った時に症状が出ます。
3)秋の花粉症
キク科(ブタクサ、セイタカアワダチソウ、ヨモギなど)やクワ科(カナムグラ)の花粉アレルギーがおこりますが、やはり雑草ですので草の生えている近くで発症します。 Ⅱ.症状 鼻汁、鼻づまり、くしゃみがアレルギー性鼻炎の3大症状です。他に目のかゆみや、涙などのアレルギー性結膜炎も合併します。またアレルギー性鼻炎の2割の人に気管支喘息が合併します。他に手足や頚などの皮膚の露出部にもアレルギー性皮膚炎をおこしてきます。また花粉症と関連して花粉と共通なアレルギー性を持つ異物や野菜を食べると口の中でアレルギー反応をおこし口腔内や口唇のハレやかゆみがおこることがあり、花粉・食物アレルギー症候群(口腔アレルギー症候群の一つ)と呼ばれています。 イネ科、マメ科の花粉とウリ科の果物(メロン、スイカ等)ヨモギ花粉とセリ科野菜、カバノキ花粉とバラ科の果物(リンゴ、モモ、サクランボ)等が代表的です。
Ⅲ.治療
最近は天候不良でスギやヒノキの花粉の飛散状況や予報が発表されていますので、花粉の飛散する2~4週間前からの抗アレルギー薬の内服をします。
またマスク、めがねによる花粉の付着防止、外出からの帰宅時はうがい、洗顔、洗鼻、上着のほこりを払うなどの予防も有効です。
発症時には点鼻薬、点眼薬の使用が進められます。
また、より根治的に花粉のアレルギー性を減少させるために減感作療法がおこなわれています。
スギ花粉では皮下注射や舌下に花粉エキスを投与しますが、少なくとも3年は継続する必要があります。
浦田医院 院長 浦田誓夫