=第252号平成30年7月号=
下 痢
体の中の水分は、口から入り胃腸を流れていく間に、非常に多くの出し入れがあり、まず、口から1日に約2ℓの水分をとると胃腸からの吸収が約9ℓ/日。逆流胃腸からの分泌が約7ℓ/日にもなり、便として約100mℓ~200mℓ/日の水分が排泄されます。従って下痢は胃腸からの水分の吸収が減っておこる(吸収不良性下痢、浸透圧性下痢)か、胃腸からの水分分泌が過剰になりおこります(分泌性下痢、滲出性下痢)。
Ⅰ.吸収不良性下痢、浸透圧性下痢
冷たい飲物やアルコールのとりすぎ、強いストレスなどにより腸壁の蠕動が刺激されやすくなります。また、慢性の腸炎や手術で腸を切除し腸が短くなった場合、小児の乳糖不耐症、膵臓の疾患や胆のう切除後でも脂肪の消化が低下するため脂肪性の下痢となります。他、6月号の便秘の項で述べましたように塩類下剤、浸透圧性下剤、腸の運動を刺激する下剤の使い過ぎでも下痢します。
Ⅱ.分泌性下痢、滲出性下痢
1)多くは感染性の胃腸炎でおこります。
冬はロタウイルス、ノロウイルスやアデノウイルスなどのウイルス性胃腸炎が主体となりますが、これから夏に入ると細菌性胃腸炎が増えてきます。多くは、食品の保存に問題があり、食品中で細菌が増殖したことによります。腸炎ビブリオ、サルモネラ、カンピロバクター、大腸菌などが代表的ですが、特に腸管出血性大腸菌(O-157など)は時に重症となります。治療は脱水の治療とともに適切な抗菌薬を用います。強い下痢止めの薬は感染が悪化する場合があるので、慎重な投与が必要です。また、コレラは稀ですが、コレラの下痢は腸炎による浸出性下痢に加え、コレラトキシンという毒素が腸からの水分分泌をおこし、重篤な下痢のため容易に脱水におちいります。また、抗菌薬(セフェム系)内服による偽膜性腸炎は腸の常在細菌叢の変化によりクロストリウムディフィシル菌が増殖して発熱、腹痛、下痢をおこしてきます。
2)非感染性下痢
①出血性大腸炎は、高齢者に多く、腸管の血液循環が低下して出血を伴う下痢が出現します。また、潰瘍性大腸炎、クローン病などの免疫疾患でも慢性の下痢や出血を伴います。大腸癌でも同様のことがおこります。他に鎮痛下熱薬や胃薬のランソプラゾールなどでも下痢を起こす場合があります。
②過敏性腸症候群
ストレスや食物摂取により胃腸の運動や水分分泌が過剰になり下痢をおこしてくる場合があります(下痢型)。便秘型もありますが、6月号で述べました。治療はストレス回避、充分な睡眠、食事量のバランス、夜食や偏食をさけることがまず大切です。薬としては消化管の運動や知覚過敏を抑えるためのトランコロンP、イリボーなど、また腸内細菌叢のバランスを整えるための乳酸菌製剤を用います。
浦田医院 院長 浦田誓夫