天 衣 無 縫
=第1号 令和元年5月号=
大腸の悪性腫瘍について
悪性腫瘍とは無秩序で無限の増殖能を持つ細胞により正常の細胞組織が破壊され、放置すると死に至る病気です。大腸の悪性腫瘍は99%以上が癌で、そのほか稀に悪性リンパ腫や肉腫がみられます。大腸がんは日本ではこの30年間で約5倍に増加しており、男性では肺癌、胃癌に次いで3番目、女性では癌の中で1番多くなっています。
大腸癌が増えた理由として、生活スタイルの変化が関わっているとされます。大腸癌の危険因子として最も高いのはアルコールで、次いで加工肉(ハム・ベーコン・ソーセージ等)・赤みの肉・肥満・糖尿病・喫煙(直腸癌)などが知られ、逆に予防因子として、身体活動(結腸癌)・食物繊維・カルシウム・魚の油の不飽和脂肪酸が知られています。他にも高身長・コーヒー・カロテノイド・牛乳・ビタミンD・にんにく等が言われていますが確実とは言えません。
大腸は成人で約1.2~1.8mの長さの管状の臓器で、小腸で消化・吸収された食物の残りかすから、水分を吸収して便を作り肛門より排泄する働きをしています。大腸は、小腸と繋がる盲腸から始まり、結腸(上行結腸・横行結腸・S状結腸)S状結腸・直腸移行部,直腸までを言い、直腸は肛門管に繋がっています。大腸癌は50歳代より高年齢化につれて増加しその60~70%はS状結腸と直腸から発生してきます。
大腸癌の早期診断には便の潜血反応の検査と大腸カメラを用いますが、通常の健診では便潜血反応を2回行います。感度は60~70%程度ですが、それでもこの検査の受診率そのものが男性で約40%女性では約30%で受診率が低く、積極的に受けられることをおすすめします。大腸カメラは人間ドックで検査されますが、大腸はひだが多くしかも硬いためカメラといえども完全に調べることは困難で、両方の検査が望ましいと言えます。もちろん何らかの消化器症状があれば医療機関で同様の検査が行えます。
大腸癌は他の癌と同様、局所にとどまり転移のない早期癌の段階で発見すると90%以上の生存が可能です。進行癌では現在、手術・化学療法の組合せで転移がなければ50~60%と進歩しつつあります。しかしやはり健診を受けて早期に発見することが最善の選択です。
浦田医院 浦田 誓夫