令和元年 5月 おしゃべり通信 

令和元年 5月 おしゃべり通信 

おしゃべり通信
No.234 H31.5.15発行  如春会 浦田医院

~H29年4月発行 日本小児科医会会報特集~

スマホパンデミック!⑪
<スマホ社会の落とし穴>

2.「劣化」の実相 -⑤
(4) 生活の乱れ・睡眠時間の短縮化 
 
 子供の就床時間は年々短くなっています。下図は小学生の生活リズムを書いたものですが、一日に必要な生活時間の構成は、学校制度が開始される前からそう多くは変わっていませんが、全国民の教育が義務教育化されると、学校という集団に所属する為の社会適応が当たり前に始まって、学校制度に適応するための時間(=家庭学習・学校へ行くための準備)がその中に入ってきます。

 一般家庭の生活リズムの中にTV視聴が入ってきたのは昭和35年頃のことです。最低必要な生活時間の中に新しい事象が始まれば、何を切り捨てれば24時間の収支が合うのでしょうか?そうです。「遊びの時間内にそれを入れる」若しくは「何にもしていないと考えられている時間=睡眠時間」を短くするしか、その為の時間の確保はできないのです。そして実際に日本人の生活時間から「身体遊び」「外遊び」「睡眠時間」は短縮され続けています。

1981年に22時43分だった中学生の就床時間は2014年に23時12分とこの30年で30分も遅くなっています(日本学校保健会調査)。1983年に発売されたTVゲーム(男子が依存しやすい)、1999年頃からPC/メール(女子が依存しやすい)機能を持ったケータイと称する携帯用端末機の普及が、この睡眠時間の短縮と連動していることを認めざるを得ない状況だと皆さんも納得されますよね?

 特に注目しなければならないのは、”ガラケー”時代には平日深夜1時以降に寝る中学生は11.8%だったのに対し、スマホを持つ生徒が1/3を超えると36.9%に激増することです(福岡市教育委員会・NPO子どもとメディア共同調査2013)。

子供たちの「疲労感」が最も強いのも、週明けの月曜日であることも解っています。週末に平日の疲れをとって、月曜日を迎えるのではなく、平日の2~5倍に増える電子映像メデイアへの接触時間が土日祝日などの休日を真の休養日にしていないのが、日本の家庭生活の実態なのです。つまり、平日に疲労回復し、週末につかれている・・?こうして疲れ果てて学校に行っているのでは、楽しいはずの学習にも嫌気がさし、根気も失われて、これでは学校での教育の健全性を保てないのは当たり前と言えるでしょう。これは家庭の習慣・社会教育の問題であり、学校だけが「学習の問題としてこれを改善しよう」としても、無理があるというべきです。

依然、高水準が続いている「不登校」。当事者である子供たちは概ね「いじめられた」「自分にとって学校に不適切なことがあった」ことをきっかけに学校に行けなくなったと言っていますが、客観的にみると、当初はどうあれ結果的には、学校にいけない憂さを「電子映像接触」に振り向け、今度はその為の疲れが取れず、そうやって長期欠席が続くと学業成績も思うようにならず、不達成感はいよいよ増大し、自己評価を自分で下げる結果となって、学校に復帰できなくなっている実態も既に明らかといえます。

これについて当院外来診療でも如実であることは、本人や家族ばかりでなく学校及び教育関係者も当初の引き金となった事案に拘泥する傾向が強く、続いて起きてくる家庭内で起きる自己責任に属する二次的現象をなかなか認知することができず、悪循環に入ってしまう例が多いことです。当初の問題は当初の問題として、具体的に、今できる子供の育ちへの支援を並行して行わなければなりません。つまり、どうやって「生活リズムを保持」するか?学校に戻った時に困らないように「学力を保持」しておくか?大きな原因をなっているだろう「メディア」オフを達成するか?等々に尽力すべき事は多い筈だと思いませんか?

子供の生活リズムを健全に保つこと。これは健康の問題から社会的成功まで、全ての幸福のための基本です。 

子どもの事故と対策~子どもを事故から守ろう~
日頃から練習しておきましょう★「救急車の呼び方」

① 実際の呼び方
・119番にダイヤル
・「火事ですか?救急ですか?」と聞かれるので『救急車をお願いします』と答える
・まず住所を伝え、近くに目印となるものがあれば伝える
・子どもの状態を簡潔にはっきり伝える
・応急手当の指示を受け、従う

② 救急車に乗る前に用意するもの
・健康保険証、子ども医療費受給者証、母子手帳
・タオル、ティッシュ、ビニール袋
・着替えの衣類
・ミルク、哺乳瓶
・身体の状態のメモや熱型表、かかりつけ医の薬など

参考:改訂4版 子どもの事故と対策―子どもを事故から守ろう―
文責:管理栄養士 金柿